Column -コラム-

201809-03
建築の設計図面には間取りを示した平面図や、建物の外観を示した立面図に代表される、計画全体やデザインを示す意匠図とよばれる図面とともに、構造図、設備図と称した、エンジニア(技術者)が作成する図面もあり、私は主に構造図を普段書いています。上に掲げた図はその構造図に含まれる軸組図で、木造の建物のものです。軸組図は建物を横から見て、ある位置の隣接する柱・梁の骨組を取り出して示したものです。構造図で平面図にあたるものは伏図と言い、上から見た図面なので計画内容や建物全体のバランスを見るのに大事な図面です。それに対して横から見て、建物の上下の関係を理解できるのが軸組図になります。屋根・床・壁の重さは梁に集められ、それが柱に伝わって最後に地面に達します。概ね地震の時の力の流れも同様です。そういう意味では力の伝わり方を見るのに適しているのは伏図ではなく軸組図なのです。木造の建物の柱は地面から屋根まで連続しているのが基本です。そうでない場合2階の柱は梁の上から立てることになります。その柱直下の近くに1階柱があれば良いのですが、無い場合は梁を大きくしないといけません。軸組図の左側は基本の状態、右側はそうではない状態を示しています。一昔前は集成材という大きな梁を作る技術が無かったので、柱の下に柱を配置する基本に忠実でした。最近は集成材の普及によりプランニングの自由性を重視して梁上に柱や耐力壁を作ることが増えました。しかし地震時に耐力壁の端にある柱直下に柱が無い場合、効果は半分くらいになってしまいます。それを踏まえて耐力壁の量を増やすか、十分大きい梁にしておけば問題ないのですが、現在の住宅レベルの構造審査にはそこまで法的に規定されていません。熊本の地震で比較的新しい木造住宅にかかわらず倒壊したものにはこの基本が守られていない住宅が多かったそうです。家をこれから建てられる方は、そんなところにも注意して見て、1階と2階の間取りがあまり上下で揃っていないなと感じたら、依頼している建築士か工務店の方に構造の専門家が設計されているか確認してみると安心ですね。


201809-02
写真は、事務所の近所にある枳殻邸の門です。この門の形式名は「カブキモン」です。京都の景観条例でも指定されている形式で、和風の門形式なので何となく「歌舞伎門」と書くと思ってしまうのですが、正解は「冠木門」です。木のてっぺんが雨水で傷まないように金属の板で蓋をしているので、この名前が付けられたのだと思います。原始的な構造をしていて、お寺や城郭の門に使われることが多い形式です。少し京都の町中には武骨に見えるかもしれませんが、大きさを抑え、梁を通して(梁勝ち)小さい屋根をかければ街並みにもなじむのではないかと思います。最近、ヤマケン(山と木文化の研究会の略称)では地域産木材の利用として木塀が見込めないかを議論しています。木材活用の問題の中に、いい木材であってもそれに見合った価格がつけられないということがあります。木にもグレード分けがなされ(AからDランクまである)ていて、節が出ないようにするなど手間をかけて良い建築製材にすれば、一昔前までは十分な儲けが出る値段で売れたのです。しかし、安い外国産材に押される等して、建築製材の価格は下がったままになっています。最近はチップにされるものもベニヤや集成材にされるものも、あまり大きな価格差がつけられません。後者のものの方が工場へ大量に安定した出荷ができるので供給量は増えてきているのですが、その価格では山の所有者に十分な利益が回らず、Aランクの材にする手間代は出るべくもない状態です。景観条例でマンションのゲートを鉄骨や鉄筋コンクリートで作られることが増えていますが、町中の景観を作り出す門や塀に、いい木材を用いて十分な対価を山元に返すことは持続可能な社会を作ることにも寄与できます。耐久性や工法の合理化をはかって一般的にしたいものです。


201808-01

写真はここ数年、建築士会で関わってきた八幡市の男山団地である。所有・管理者のUR(都市再生機構)・関西大学・八幡市・京都府でH25年に四者協定を結んでこの地域の再生に取り組んでいて、後者2つの方とは直接接点はなく主にURと関西大学の担当者と共同してきた。URについては「URでアール」のコマーシャルでご存知の方も多いと思うが日本全国に相当数の住宅を所有・管理しており男山団地は西日本で3番目の大型の団地である。今後の人口減を見込んで男山団地は集約(建物を減らしていく方向)する方針のようだが色々なキャンペーン等(若年層をターゲットに家賃を安く設定したり、何か月かの家賃を無料にして内装を自分で行うDIY制度がある)もあり、想定よりも団地の人口は減っていないようだ。(はっきりとした数字は公表されないので推測だが)一方男山団地周辺にあるワンオーナー型と思われる賃貸住宅は外観からの判断だが相当数空き家になっているように見える。同じ地区ならしっかりと管理されているURの物件の方に移住者は流れて行ってしまうのだろう。団地内には住戸ずつに分譲された5階建ての建物もあるが(分譲団地と呼ばれている)現在所有者はそこには住まず、賃貸住宅にしている住戸が相当数あり、(オーナー貸しと呼ばれている)ここも上階を中心に空室が増えているようだ。人気のあるUR物件が近くにあることは、地域全体のイメージ向上や活性化ではプラスの面もあるが、賃借人の奪い合いという意味では競争相手でもある。分譲団地には「管理組合」なるものがあり、住戸所有者情報の管理から建物の清掃や維持管理を行っているのだが輪番制で役を回していることもあり、あまり組織としてしっかりしているところは少なく、URに賃借人の争奪で太刀打ちできるような状態ではないだろう。ワンオーナー型は修繕の費用などを計画的に貯めているかどうかで状況は変わるが、現在空室が多い建物に商品価値をあげる投資を行うリスクを負うオーナーは少ないのではないかと思う。しかしワンオーナー型は意思決定が簡単なので建物をグレードアップすることも処分することも可能だ。一方、分譲団地は意思決定に多くの手間と時間を要するため今後事態は深刻になるだろう。分譲団地の所有者は管理費と修繕積立金を毎月支払わなくてはならないのだから、賃借人のつかない住戸はオーナーにとって文字通り「負動産」なのだ。「負動産」と感じているオーナーが集積した団地はどうなるのだろう? 分譲団地の管理組合に今後おとずれる危機的時代に対応できるのだろうか?

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