201809-02
写真は、事務所の近所にある枳殻邸の門です。この門の形式名は「カブキモン」です。京都の景観条例でも指定されている形式で、和風の門形式なので何となく「歌舞伎門」と書くと思ってしまうのですが、正解は「冠木門」です。木のてっぺんが雨水で傷まないように金属の板で蓋をしているので、この名前が付けられたのだと思います。原始的な構造をしていて、お寺や城郭の門に使われることが多い形式です。少し京都の町中には武骨に見えるかもしれませんが、大きさを抑え、梁を通して(梁勝ち)小さい屋根をかければ街並みにもなじむのではないかと思います。最近、ヤマケン(山と木文化の研究会の略称)では地域産木材の利用として木塀が見込めないかを議論しています。木材活用の問題の中に、いい木材であってもそれに見合った価格がつけられないということがあります。木にもグレード分けがなされ(AからDランクまである)ていて、節が出ないようにするなど手間をかけて良い建築製材にすれば、一昔前までは十分な儲けが出る値段で売れたのです。しかし、安い外国産材に押される等して、建築製材の価格は下がったままになっています。最近はチップにされるものもベニヤや集成材にされるものも、あまり大きな価格差がつけられません。後者のものの方が工場へ大量に安定した出荷ができるので供給量は増えてきているのですが、その価格では山の所有者に十分な利益が回らず、Aランクの材にする手間代は出るべくもない状態です。景観条例でマンションのゲートを鉄骨や鉄筋コンクリートで作られることが増えていますが、町中の景観を作り出す門や塀に、いい木材を用いて十分な対価を山元に返すことは持続可能な社会を作ることにも寄与できます。耐久性や工法の合理化をはかって一般的にしたいものです。